一 |
汝れ三伏の暑に恐ぢて
陋居に痩せをかこつ人
汝れ天然の美を疎み
陋居に昼を寝ぬる人
など神島の水を踏み
魔を梵天に攘はざる
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二 |
茲にうしほの花咲きて
松に不断の調べあり
野母の岬に夕立てば
虹千丈の橋を刷き
八郎岳に雲起てば
峰百態の奇を画く
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三 |
牙営に三鼓高鳴りて
裸児三千の躍る時
投瓜獲琚の浪立ちて
驪龍頷下の水騒ぐ
海若ところを失ひて
尾閭の外に潜むなり
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四 |
小瀬戸の浦に楯並めて
稲佐おろしに飜へす
敢為の旗を君見ずや
腰に克己の太刀佩きて
手に文弱の血を洗ふ
そこに護国の魂あり
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五 |
噫鎮西の一角に
嵎を負ふこと二十年
逆巻く濤を土と踏み
玉散る汐に嘯きつ
鍛ひあげたる覇者の権
我れ長へに挿さなむ
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