泳法の解説

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基本の游
足撃
(そくげき)
 浅瀬を游ぎ下る時、水底の様子がわからない時などに用いる游。クロールでのバタ足とは異なり、膝から下を曲げて足の甲で水面を打つ。これは、游の目的が前に進むことよりも浮力を得ることにあるためである。手は両手で∞を描くように水を押さえる。(第一法)手足の使い方で、その場で停止したり、前後左右に自由に動くことができる。海・川で泳ぐ際、最も役に立つ游である。
手操游
(たぐりおよぎ)
 長距離を疲労少なく移動するための游。左先(右足が利き足)の場合、体を少し斜めにして右肩を少し引く。(手のひら半分ほど)右足は膝を引き左足は膝から下を曲げる。この時の足の構えは横体泳法に見られる煽り足にも似ているが、この位置から右足は水を踏み、左足は水を蹴る。踏み足は立ち游の足であり、蹴り足は足撃のあしである。手は足撃の時よりも大きく掻き、掻き終えたら胸元へもってくる(第二法)
 この游の特徴は、あまり伸びをとらないことである。これは踏水術が育まれた白川の流速が速かったせいではないかと考えられる。
 海で長い距離を游ぐときは、体を平らにし、左右の足は対称の形で水をふむ。小堀平七師範は学習院の沼津游泳場において両踏み足の手操游を指導したという。
早抜游
(はやぬきおよぎ)
 短距離をより速く移動するための游。足の動きは手繰游と同じである。左先の場合、足を踏むと同時に水面に抜いていた右腕を前方に突き出すと同時に左手で水を掻いて大きな推進力を得る。足を引いて構えつつ右腕は体の横から抜き、左腕を抜いて前方へ出す。手繰游と違い、右腕と左腕が常に真逆の位置にあり、御前游や抜手游との共通性がある。
 全体のタイミングが揃わないと、進まない上に非常に疲れる游であり、手勢、足勢、躰勢の三勢一致が大切とされる。
挺身抜游
(ていしんぬきおよぎ)
 早抜游のさらに高速版。利き腕を前方へ突き出すと同時に頭を水中に突っ込み、最大限の推進力を得る。
立游
(たちおよぎ)
 踏水術を踏水術たらしめているのがこの立游である。両足で交互に水を踏むことで一定の浮力が得られ、両手が完全に自由になる。膝の間隔が狭くならないように、水に腰かける感覚で行う。
水練
(すいれん)
 水練とは、水泳そのものを指す言葉であるが、小堀水翁師範は潜泳を水練と呼んだところから、当協会では現在も潜泳を「水練」と呼んでいる。水中でいかに長時間活動できるかは、游泳術を護身術として考えた場合に非常に重要であるため、甲組の稽古では毎日必ず実施している。
浮身
(うきみ)
 浮身は游泳術の別科で誰にでも必ずできるというものでもない。一般に、子供は良く浮くが成長するにつれ浮かなくなる。これは、比重の大きい筋肉・骨格が成長するためである。ただ、絶対に浮かないという人はまれで、大人でも技術を尽くせば浮くものである。浮身には箕体、一字体、十字体、左右の横体、打伏体があり、その他大字体もある。
休游
(やすみおよぎ)
この游ぎは水面に仰向き両手を体にそえて伸ばし、両掌をもって軽く水をおさえ、両足にて静かに水をはねる。この游ぎはおよぎつかれたときに行う技である。

応用の游
 小堀流踏水術の特徴は、何といっても強力な立游にある。ここに挙げる応用の游は立游のデモンストレーション的なもの。小堀流踏水術の立游は、陸上で立っているのと何ら変わらないわけで、立游をしながら何かを行う「○○游」はいくらでも考えられる。
御前游
(ごぜんおよぎ)
 殿様の前で披露する游であるところからその名が付いた。純粋に人に見せるために存在する游であり、日本泳法の様々な游の中でも特異な存在である。他の「○○游」と違って、游の始まりから終わりまでの間に何度も足の踏み方を変える場面があり、非常に難しい游と言える。艶游(つやおよぎ)ともいうように、足の強さや技術+αが求められる游である。
揃游
(そろいおよぎ)
 数人が同じ游ぎを前の人にあわせ、同じ距離を保ちながら游ぐ。揃御前游が代表的だが、大名行列では揃いの早抜游を披露することもある。
浮游
(うきおよぎ)
 両足で水を強くふみ両手では水をおさえ身体を浮出して游ぐ。あたかも浅瀬を歩き渡っているかのように游ぐ。
抜手游
(ぬきておよぎ)
 非常に高度な游で、目録クラスの游とされている。当協会でも甲組・乙組への指導は行っていない。水中を歩行するような游で、右足が出たときに右手が出る、いわゆるナンバの動きが顕著に表れている。
水書
(すいしょ)
 式泳には欠かせない游で、立游しながら字を書くというもの。水書板を持って立游する事自体は難しくないが、字を書くことに気をとられると、各人の立游のクセが出て前後左右に流されやすい。
梨むき游
(なしむきおよぎ)
 立游しながら梨の皮をむく。昔は瓜を使った瓜むき游であった。
甲冑御前游
(かっちゅうごせんおよぎ)
 甲冑をつけての御前游。何よりも強力な立ち游が必要。
空銃発火
(くうじゅうはっか)
 立游しながら鉄砲を打つ。熊本の先師祭では改造した村田銃を使用しているが、銃身が金属で埋められているため、本物の銃よりも重いらしい。
水剣
(すいけん)
 立游しながら剣道の型を行う。
水弓
(すいきゅう)
立游しながら弓を射る。稽古場がプールに移ってからは披露されることはないが、田中直一師範の水弓は大名行列の呼び物の一つであった。
髪結い游
(かみゆいおよぎ)
 ねずみ島での大名行列で披露された記録がある。立游しながら日本髪を結うのである。
浮身書
(うきみしよ)
 浮身をしながらの水書。水書板を持って浮身ができたとしても、いざ字を書こうとするとバランスが崩れやすい。

 

日本泳法大会泳法競技の種目
 游の名前ジュニア・予選種目



足撃
手繰游
早抜游



立游
浮游 
御前游 
抜手游