表紙
『游泳教範』は、小堀流踏水術六代師範猿木宗那先生が1901年(明治34年)に出版した游泳術の団体指導法の書です。発行元は東京神田の岡崎屋書店。初版時の価格は20銭でした。ここに掲載した画像は、1942年(昭和17年)に協会創立40周年を記念して刊行された復刻版を1979年(昭和54年)に再復刻版として刊行したものです。表紙は初版と異なっていますが、本文は同じ内容です。初版は国立国会図書館のデジタルライブラリで見ることができます。
題字
序文
明治三十三年初夏
熊本県知事従四位勲三等 徳久恒範
熊本県知事従四位勲三等 徳久恒範
序文
また、私は幼い頃から次のような話を聞かされていた。「熊本藩士は皆游ぎが上手であったので参勤交代の折、途中の富士三大河といえども渡人の手を借りずに藩士の力で行列を渡し、河の水が増水して渡人でも渡れないようなときでも激流の中を渡り旅を遅らせることがなかったという。游泳術は武士が最も心得ておくべきものだ。」と、全くその通りである。
今や国民全てが武人であるべき時勢に、この技(踏水術)が益々必要であると知り。ここに踏水術師範の猿木宗那君が時勢の必要に促され初学游泳教範を著し私に序を書いてくれということなので、幼少の頃の記憶をたどって序とさせてもらった。
明治三十二年五月一日
第五高等学校長正五位勲四等 中川 元
第五高等学校長正五位勲四等 中川 元
凡例
水泳に限らず、初心者への指導はこと細かく指導した方が良いので、一対一で指導した方が良いのは確かである。しかし、わずかな時間で数多くの生徒を指導できなければ游泳術の普及はない。そこで、本書では集団での指導の方法を説明する。
生徒の人数に応じて生徒をいくつかのグループに分ける。一つのグループの人数は教師の監視力にもよるので一定しないが、10名から15名が適当である。ただし、一つのグループを指導する間、他のグループにはそれを見学させることが大切である。(水に入れない)
指導を始めるにあたっては、グループ全員を一列に並べて番号を付ける。(人数の確認)
指導する場合、教師はまずこれから練習する内容を説明して、必ず何回か教師自ら手本を見せ、生徒に良く理解させることが大切である。
この教範は全体を大きく四つの章に分け、さらに各章を第一教と第二教とに分けた。
第一章第二教第一・第二の術は生徒の間隔を片手幅とし、他のところでは両手幅の間隔を取らせる。第二章第二教、第三章第二教では歩数を示したので、これよりも大きな間隔を取らせること。ただし、第三章第二教、第四章では生徒一人一人に指導する技術なので、あらかじめ間隔を決めるのは難しい。
目次
目次
第一章
第一教 游泳準備陸上教育
第二教 游泳準備水中教育
第二章
第一教 潜み
第二教 手繰り游
第三章
第一教 早抜き游
第二教 休み游
第四章
第一教 水練
第二教 浮身初歩
第一章
序文・目次
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