踏水術游泳教範 第三章・第四章

第一教・第一

第三章

第一教 早抜き游
この泳ぎはなるべく迅速に目標に到達したいときに行う技である。そのため遠距離を泳ぐのにこの技を用いるのは良くない。なぜならこの泳ぎは身体の運動が急激でありすぐに疲労するからである。
[注意] 早抜き游といっても最初は徐々に法則に従って教えるのがよい。技は自然とできるものである。

第一 面浸け抜き
これは顔を浸けて右手を抜き前へ突き出すと同時に右足を踏み左手で水を掻き左足で水を蹴る。左利きの者は逆になる。
号令「面浸け抜き 泳げー」
[注意] 形ばかりを見ないように、身体の替わるのをよしとする。


第一教・第二

第二 面揚げ抜き
これは面浸け抜きを覚えた後、顔を上げて行うもので、やり方は前項と同じ。
号令「面揚げ抜き 泳げー」
[注意]あごが水から離れないのが良い。


第一教・第三

第三 挺身抜き
これは、ここ一抜きとの決意で行う游で、利き手を前に突き出すと同時に頭を水中に突っ込み全力をもって体を進める方法である。足の踏み蹴りは前項と同じ。
号令「挺身抜き 泳げー」


第二教・第一

第二教 休み游
この游は水面に仰向きになり両手を体に添えて伸ばし両手の平で軽く水を押さえ両足で静かに水を跳ねる。これは泳ぎ疲れたときに行う技である。(図十二)
[注意]腰の曲がらないのが良い。


第四章・第一教

第四章
第一教 水練
これは潜みのさらに進んだもので、息の続く限り遠距離を潜行したり深いところに潜り物を探すなどして、水中での体力を鍛錬する技である。遠距離を潜行するには両足あるいは片足で水底の砂や石を蹴りなるべく疲労を少なくして距離を伸ばすのが大切。深いところに潜るには足から先に底に付くようにするが、岩石竹木にぶつからないように注意する。


第二教

第二教 浮身
これは游泳術の中で最も高尚な、別科のようなもので、誰もが上手にできるというものでない。大人は技術がなければ浮くことは出来ないが、子供は体質・体格によっては自然と浮くもので、泳げない者であってもこの技をやらせてみても良い。その技術は箕体を初歩とする。(図十四)


等級第一期第二期第三期

 
陸上教練
水を掻く(第三法)
体を伸ばす
匍匐足撃
面浸け
面あげ掻き
面浸け手繰游
潜み
面あげ手繰游
潜み
本足手繰游準備
潜行

 
本足手繰游
 潜行 2.7m
面浸け抜游
 手繰游 7.2m
 潜行 3.6m
面あげ抜游
 手繰游 12.6m
 面浸抜游 7.2m
 潜行 4.5m
水練
 手繰游 4分間
 面あげ抜游 5分間
 潜行 6.3m
艇身抜游
 手繰游 5分間
 抜游 12.6m
 水練 7.2m
休み游
 手繰游 5分間
 抜游 18m
 水練 9m
 艇身抜游 3.6m

 
立游準備
 手繰游 10分間
 抜游 1分30秒間
 水練 10.8m
 艇身抜游 5.4m
 休み游 30秒間
立游
 手繰游 15分間
 抜游 2分間
 水練 12.6m
 艇身抜游 7.2m
 休み游 40秒間
立游
 手繰游 25分間
 抜游 3分間
 水練 14.4m
 艇身抜游 9m
 休み游 50秒間
 立游 5秒間
御前游要領
 手繰游 25分間
 抜游 5分間
 艇身抜游 10.8m
 水練 18m
 休み游 1分間
 立游 10秒間
御前游
 手繰游 45分間
 抜游 7分間
 水練 19.8m
 艇身抜游 12.6m
 休み游 2分間
 立游 15秒間
御前游
 手繰游 1時間
 抜游 10分
 水練 21.6m
 艇身抜游 18m
 休み游 18m
 立游 30秒間
  • 一期とは試験から試験までの間をいう
  • 欄内で一段下げて記した項目は、練習に属する項目であり、新たに修行中の項目と見分けるためにそうしてある
  • 立游と御前游は初学の範囲でなく、初学の課程を習得した者に限り指導するので、教範には説明はない